妊婦の貧血!~予防と対策~【正看護師が解説】

妊娠すると、いろいろなマイナートラブルに悩まされる妊婦さんも多いですよね。貧血もその1つで、3~4割の人が経験しています。

妊娠中の貧血は、赤ちゃんの成長に影響を及ぼすだけでなく、分娩時の出血リスクや産後の回復が遅れるなど、放っておくと、悪影響が出てしまいます。

貧血が劇的に改善したり、即効性のある薬剤や食材は残念ながらありません。

地道にコツコツと日常生活の中で、食生活の見直しや、対策を講じる必要があります。

今回は、妊娠中の貧血に対する予防法や対策などをお話します。

貧血とは?

貧血とは、血液の細胞である、赤血球やヘモグロビンが低下する状態のことをいいます。

健康な女性のヘモグロビン値は、12.0g/dl~15.0g/dlです。

貧血の基準は、妊婦の場合、ヘモグロビン値が11.0g/dl未満とされています。

赤血球の中にはヘモグロビンというたんぱく質があり、全身に酸素を運ぶ役割があります。

貧血の原因はいくつかあります。貧血が生じる仕組みで分けると、3種類に分類できます。

  • 失血(大量の出血)
  • 赤血球の生産不足
  • 赤血球の大量破壊

失血(大量の出血)

消化器系のがん

大腸がん、胃がん、食道がんなどの消化器系のがんによるもの。

例えば大腸がんでは、便が潰瘍のできている部分を通過する時に、表面をこすって出血することがあります。

がんが原因で出血してしまい、貧血になります。

出血を伴う病気で、貧血につながりやすいものとして痔があります。

いきむことで、ひどい痔の場合大量に出血し、繰り返す事で貧血に移行します。

月経

女性の場合、毎月月経で血を失うため、貧血につながりやすいです。経血量の多い、月経過多の人は注意が必要です。

赤血球の生産不足

鉄欠乏性貧血

鉄分不足の偏った食事や、過度なダイエットで引き起こされる貧血です。

病気による出血でも鉄欠乏性貧血になります。

または、胃腸での鉄分の吸収に問題がある場合も鉄欠乏性貧血になります。

妊娠時の貧血は、ほとんどが鉄欠乏性貧血です。

巨赤芽球性貧血

赤血球は、骨髄で生成されます。

最初に赤芽球という赤血球のもとになる母細胞が作られ、細胞分裂していきます。

この細胞分裂の時に必要なものが、葉酸やビタミンB12です。

このビタミンが不足すると、赤芽球の細胞分裂がうまくいきません。

その代わりに、巨赤芽球という大型の赤芽球ができてしまい、赤血球が増えずに貧血になってしまいます。

原因は以下です。

  • バランスのとれた食事を摂っていない
  • 大量の飲酒
  • 胃腸の障害による、ビタミン類の吸収ができない

血液のがん

白血病

血液を作る骨髄ががんになると、異常な白血球ばかりが作られます。これが白血病です。

結果、赤血球なども作られなくなってしまうため、貧血になります。

多発性骨髄腫

血液の細胞の1つに「形質細胞」があります。この細胞ががん化してしまう病気です。

がん化された異常な細胞「骨髄腫細胞」が、体内に増殖し、正常な血液細胞を作り出せず、貧血になります。

再生不良性貧血

骨髄の機能が低下し、血球のもとになる細胞に障害が起こる病気です。赤血球だけでなく、白血球や血小板なども不足してしまいます。

続発性貧血

これは、他の病気が原因となって起こる、二次性の貧血です。

がんが原因となる場合や、腎臓病、肝臓病、感染症、膠原病、慢性関節リウマチなどです。

例えば、腎臓では赤血球の生成を促すホルモンが分泌されています。腎臓病では、そのホルモンが十分に作られなくなり、赤血球が不足し貧血になります。

赤血球の大量破壊

溶血性貧血

溶血性貧血とは、赤血球の寿命が短くなってしまい、赤血球が溶けてしまうものです。

新しい赤血球が作られるより、溶けていく量の方が多いために引き起こされる貧血です。

肝硬変や過度な運動により起こります。

妊婦はなぜ貧血になりやすい?

妊婦の貧血は、鉄欠乏性貧血がほとんどであることは上述しました。

なぜ妊婦は貧血になりやすいのでしょうか?

それには理由があります。見ていきましょう。

妊娠初期から貧血になる場合

女性は毎月の月経により、出血による鉄分の不足が起きやすいです。

またダイエットのための食事制限をすることにより、食事量が減り鉄分の摂取もおろそかになりがちです。

上記に加え、妊娠初期は、つわりにより吐き気や食欲不振が起こり、食事量が減ることから貧血に移行しやすいです。

もともと、妊娠前から貧血気味であった人の場合、妊娠初期から貧血になることが多いです。

妊娠後期に貧血になる場合

妊娠すると、血液量は1.5倍に増えます。これは、赤ちゃんや子宮にたくさんの血液を届けるためです。

このとき、赤血球も増えますが、血漿と呼ばれる液体部分の方が多くなるので、血液が薄まった状態になります。

さらに、赤ちゃんの体を作るために、優先的にママの体内にある鉄分は赤ちゃんへ運ばれます。

これが、妊娠中の鉄欠乏性貧血の主な原因です。

赤ちゃんへの影響

貧血といっても、程度の差が大きく、少しの貧血であれば赤ちゃんへの影響は心配ありません。

血液検査で、貧血と診断される、ヘモグロビン値11.0g/dlを大幅に下回る、「6.0g/dl」になると、胎児の発育不全や早産の危険があります。

大体、妊娠初期と妊娠後期に血液検査を行い、貧血の有無を確認する産院が多いです。

貧血は、ゆっくり進行すると自覚を伴わないことも多く、検査をして初めて貧血に気付く事も多々あります。

まずは妊婦健診を確実に受けましょう。

母体への影響

出産時の影響

貧血が続くと、体力の低下が起こります。

出産は体力の消耗が激しいものです。体力が低下している状態では、有効な陣痛が起こらず、出産自体が長引く可能性があります。

また、出産時は個人差がありますが、出血を伴います。出血量が多い場合、さらに貧血が進み、産後の体力回復に影響が出ます。

産後の影響

産後は、循環血液量は元に戻ります。

しかし、出産時の出血や、授乳により鉄分が不足になります。

産後の貧血は、体力の回復が遅れることにつながります。

また、貧血により思考がままならず、産後うつになる心配も懸念されます。

貧血にならないための予防について

成人女性の1日に必要な鉄分量は10~11mgです。

妊娠期はその倍の21mgが必要とされます。

鉄分は体内で毎日使われるので、毎日補うことが必要です。

エネルギー摂取量と鉄分の摂取量は比例しています。そのため、食事を抜いたり、お菓子で食事の代用をすると、鉄分の摂取量は減ってしまいます。

1日3食の食事をバランスよくとり、工夫して鉄分補給を心がけましょう。

貧血時にとりたい栄養素

  •  鉄分 : ヘモグロビンの原料
  •  たんぱく質 :鉄の吸収を助ける
  •  ビタミンC :鉄が吸収されやすくなる
  •  ビタミンB6 : たんぱく質の合成を助けて、ヘモグロビンを生成する
  •  ビタミンB12 : ヘモグロビンの生成を助ける
  •  葉酸 : ヘモグロビンの生成を助ける

鉄分を多く含む食材をとる

鉄には、肉や魚の赤身、豚や鶏レバーなどの動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、豆や野菜に含まれる「非ヘム鉄」があります。

体内に吸収されやすいのが、「ヘム鉄」です。

「非ヘム鉄」は、吸収率は低いものの、各ビタミンなどの栄養素も同時に摂れる利点があります。

いろいろなものを組み合わせてバランスよく摂取しましょう。

鉄分含有量の多い食材 (100gあたり)

~肉・魚編~

  •  あさり(水煮缶): 29.7mg
  •  煮干し(かたくちいわし) : 18.5mg
  •  しじみ(水煮) : 14.8mg
  •  豚レバー : 13.0mg  ※1
  •  牛肉赤身 : 3.5mg
  •  いわし(缶詰): 2.3mg
  •  ぶり :2.3mg
  •  鶏もも肉 : 2.1mg
  •  たまご : 1.8mg

※1 レバーの中でも豚レバーが一番鉄分を豊富に含んでいます。

鶏レバーは9.0mg、牛レバーは4.0mgです。

レバーの摂取は妊娠初期は控えたほうが良いでしょう。

筆者はスーパーに売っているレバーの串焼きをよく利用しましたよ。

~豆・野菜編~

  •  乾燥ひじき : 58.2mg
  •  焼き海苔 : 11.4mg
  •  高野豆腐 : 7.5mg
  •  カットわかめ : 6.1mg
  •  納豆 : 3.3mg
  •  小松菜 : 2.8mg ※1
  •  枝豆 : 2.7mg
  •  かぶの葉 : 2.1mg
  •  ほうれん草 : 2.0mg

※1 小松菜が野菜の中では一番含有量が高いです。ビタミンCも豊富な食材です。

鉄分+たんぱく質がとれる食材

たんぱく質は、ヘモグロビンの材料になり、鉄の吸収をよくする働きもあります。

鉄分と一緒に、たんぱく質もセットで摂れる食材を毎食の中で取り入れましょう。

  • 牛赤身肉
  • 豚ヒレ肉
  • まぐろ
  • あさり
  • 納豆

鉄分の吸収を促す食材をとる

貧血の約9割は鉄欠乏性貧血ですが、葉酸やビタミンB12の不足も貧血の原因になります。

葉酸 : 赤血球の生成を助ける

  • レバー
  • 貝類
  • キャベツ
  • パセリ
  • ニンジン
  • トマト
  • バナナ
  • メロン
  • いちご
  • のり
  • わかめ

ビタミンB12「赤いビタミン」 : ヘモグロビンの生成を助ける

  • レバー
  • 肉類
  • 牛乳

ビタミンB6 : たんぱく質の合成を助けて、ヘモグロビンを生成する

  • ほうれん草
  • ピーナッツ
  • 大豆
  • バナナ

おやつも鉄分入りにする

ゴマ入り南部せんべい、かりんとうは鉄分が多く含まれるおやつです。

妊娠中は、鉄分を意識しておやつ選びをしたいですね。

また、鉄分が強化されているヨーグルトや、プルーンなどの食品もおやつとして取り入れると良いでしょう。

鉄なべ

鉄なべや南部鉄器には、調理の時に鉄が溶け出します。

鉄なべを利用することで、鉄の摂取量が増えるのでオススメです。

筆者は鉄たまごを使用しています。鉄なべを購入しなくても、たまご形になった鉄をお湯をわかす時やお味噌汁を作る時に一緒に入れるだけです。簡単で使い勝手もよくオススメですよ。

タンニンの摂取を控える

タンニンは鉄分の吸収を妨げます。

タンニンを多く含む、緑茶や紅茶、ウーロン茶は常飲しないほうが良いでしょう。

貧血対策中は、麦茶やルイボスティなどに変えるのがオススメです。

貧血の症状は?

貧血の症状にはさまざまあります。

上述したように、もともと貧血でゆっくり進行した場合は、体が貧血に慣れてしまい自覚症状に乏しくなります。

逆に急に貧血が進行した場合は、軽い貧血であっても歩けなくなる程です。

貧血症状の強さは、進み具合によります。

貧血とは、酸素を運ぶ役割であるヘモグロビンが減った状態です。

体が酸素不足になる、いわゆる酸欠のような状態になり、さまざまな症状が出ます。

動悸・息切れ・めまい・立ちくらみ

少し体を動かしたり、階段の上り下りだけでも心臓がドキドキしたり、息があがります。

活動することで、体の酸素消費量は増えますが、貧血時は酸素不足の状態なので動悸・息切れが起こります。

また、重力の影響で体の一番上にある、頭に酸素が回りにくく、結果めまいや立ちくらみの症状が出ます。

これらの症状がある時は、急な起き上がりや立ち上がりをせず、ゆっくり動作をするように心がけましょう。

深呼吸をしながら、自分で確認しつつ動きましょう。

顔色がわるい

血色がなく青白い顔になります。

貧血では、血液が薄まった状態で酸素が不足しているので、顔も青白くなります。

目の下まぶたの内側をチェックしてみましょう。

「あっかんべー」をした時に見える、下まぶたの色がピンクや赤色であるのが通常です。

貧血時は、まぶたの内側も酸素不足になるため、血流がなく白っぽい色になります。

普段から自分で下まぶたの貧血のチェックをしておくと、進行しているかわかりやすくなります。

疲れやすい・眠気・だるい

鉄を必要とするヘモグロビンが減るので、全身への酸素供給量が減り、体の疲れがとれにくくなります。

何となく、酸素が薄いような感覚を覚える人もいるでしょう。

ゆっくり何度か深呼吸をしたり、できる時は横になり安静にしましょう。

頭痛・肩こり

脳も酸素不足になり、頭痛が起きます。

また、筋肉も酸素不足になることから肩こりを感じる人もいます。

爪が割れる・へこむ

爪は皮膚の延長で、たんぱく質からできています。

鉄が不足すると、爪の再生も遅くなり、もろく薄い状態になります。

鉄欠乏性貧血の爪は、反り返り、溝ができたり白っぽいのが特徴です。

肌の乾燥

血液が十分な酸素を補給できないため、血行不良を起こします。

その結果、皮膚の新陳代謝も低下し、皮膚がカサカサしたりごわつくなどのトラブルが起こります。

抜け毛が増える

髪の毛も血行不良により、毛根に栄養が届きにくくなり、抜け毛が増えることがあります。

甘いものがやめられない

鉄分が不足することで、体は鉄を要求します。

しかし補給されないと、体は手っ取り早くエネルギーを補おうと甘いものを欲するようになります。

甘いもので一時的に血糖値をあげ、解消しようとします。

氷が食べたくなる

「異味症」といって、鉄不足の時はやたらと氷を食べたくなります。

自律神経の働きが乱れることで、体内や口の中を冷やそうとして氷を求めます。

イライラしたり情緒不安定になる

不安やうつ症状をやわらげる、セロトニンと呼ばれる脳内ホルモンの生成には鉄分が必須になります。

鉄不足は、精神状態にも影響を及ぼします。

対策

貧血になった時の対策を見ていきましょう。

自覚症状で気付く場合もありますが、病院で採血による貧血チェックで指摘され、わかることが多いです。

食事の見直し

予防法で詳しくは上述しましたのでご覧下さい。

貧血を治すには即効性のあるものはありません。

数ヶ月以上はかかることなので、日ごろから自分なりに取り入れられる食事で工夫しましょう。

医師の指示による投薬

かかりつけ医で鉄を補う、内服薬の処方がされることがあります。

決められた用法、容量を服用しましょう。

ただ、鉄剤には吐き気や便秘、下痢、胃のむかつきなど、消化器症状の副作用があります。

つわり中は特に内服しづらいと感じる人も多いです。その場合は自己判断で中断せず、医師に相談しましょう。

サプリメントの活用

妊娠中に葉酸のサプリメントを摂る人も多いですね。

葉酸+鉄分も補えるものもたくさんあるので活用してみましょう。

サプリメントの活用もかかりつけ医に相談してから服用するようにしましょう。

安静やこまめな休憩

外出先など、普段より動くことが多くなる場合は、適宜腰掛けるなどこまめな休息をとるようにしましょう。

妊婦が転倒しては危険です。いつもより慎重にゆっくり動くように心がけましょう。

浴室の環境を整える

貧血があると、湯船から立ち上がった時にめまいや意識が保てなくなり転倒することがあります。いわゆる脳貧血です。

入浴する時は、以下の工夫をしましょう。

  • 長湯をしない
  • 滑り止めマットを使用する
  • 手すりをつかみながら移動する
  • 立ち上がりはいつもよりゆっくり行う

貧血対策の注意点

  • 薬の使用は、サプリメントを含め医師に相談すること
  • 鉄剤の内服は便が黒くなることを知っておく

まとめ

女性はもともと貧血になりやすい上、妊娠・出産・授乳期でさらに貧血に悩まされるものです。

ただ、意識することで貧血対策は取りやすく、貧血が改善することで体調の改善や美容面でも嬉しいことが多いものです。

ぜひ、貧血予防・対策を生活の中に取り入れてみましょう。