胎盤とは?役割や構造、胎盤の異常について【助産師が解説】

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妊娠すると母体には様々な変化が起こりますが、その中でも重要なカギを握るのが胎盤です。

胎盤は妊娠に伴って形成される組織で、赤ちゃんに酸素や栄養を与える大切な役目を果たしています。

胎盤の機能が低下すると赤ちゃんの発育に影響することもあるため、胎盤は赤ちゃんの命綱とも言えます。

しかし、胎盤という言葉は聞いたことがあっても一体どんなものなのか詳しいことはわからないという妊婦さんも多いかもしれません。

今回はそんな妊婦さんのために、胎盤の仕組みや働き、妊娠中の生活のポイント、そして胎盤の異常や注意すべき症状について説明していきます。

胎盤とは

胎児

胎児

胎盤とは妊娠に伴い形成される組織で、赤ちゃんに酸素や栄養を与え、老廃物を受け取る部分のことを言います。

胎盤には臍の緒がついていて、この臍の緒を通して赤ちゃんと物質の受け渡しをしています。

つまり、胎盤は臍の緒を介して赤ちゃんに必要なものを与え、不要なものを受け取るという「物質の受け渡し場所」です。

次に、胎盤の働きについて詳しく説明していきます。

ホルモンの産生

胎盤では主に4つのホルモンの産生をしています。

ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)

受精卵が着床すると分泌され始めるホルモンで、妊娠の維持に関わっています。

ヒト胎盤ラクトゲン(hPL)

糖や脂肪の代謝に関わっているホルモンで、赤ちゃんの成長を促す働きがあります。

妊娠が進むにつれて分泌が盛んになっていきます。

エストロゲン

いわゆる「女性ホルモン」で、子宮内膜の分泌腺や血管を増やす働きがあります。
・プロゲステロン:赤ちゃんが成長しやすい環境を整える役割を果たしています。

赤ちゃんへの栄養補給

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胎盤は赤ちゃんの消化器の役割も果たしています。

糖分や脂肪分、そしてビタミンやミネラルなどが胎盤を介して赤ちゃんに送られます。

赤ちゃんへの酸素の供給

胎盤は赤ちゃんの「肺」の役割も担っています。

赤ちゃんはお腹の中にいるときには呼吸をしていませんが、胎盤を介して送られる酸素を頼りに成長しています。

また、二酸化炭素は臍の緒を介して胎盤に送り返されるので、子宮の中に二酸化炭素が充満したり、赤ちゃんが酸欠になってしまうことはありません。

赤ちゃんを守るためのフィルターの働き

胎盤ができる前までは、母体の血液中の物質がそのまま胎児に移行してしまうので、妊娠初期には特に薬の服用には注意する必要があります。

胎盤ができると胎盤が「フィルター」のような役割を果たしてくれるので、有害なものは赤ちゃんには届かなくなります。

しかし、分子量の小さいものはフィルターを通過します。

特にアルコールやタバコのニコチンは胎盤を通過してしまうため、妊娠中はお酒やタバコはやめるようにしましょう。

このように、お腹の赤ちゃんは自分で呼吸したり食事をとったりできないので、胎盤から送られる酸素や栄養分を使って成長していきます。

胎盤は胎児の肺であり、胃腸や腎臓であり、さらにはホルモンや免疫機能も全て兼ね備えています。

胎盤はお腹の赤ちゃんが生きていくためになくてはならない命綱なのです。

胎盤の位置や構造

胎盤位置と名称

胎盤位置と名称

胎盤は子宮の壁に貼りついていますが、子宮口から離れた部分にあるのが正常な位置です。

しかし、中には胎盤が子宮口に近い位置にある「低置胎盤」や、胎盤が子宮口を覆っている「前置胎盤」もあり、胎盤の位置を観察することは妊娠の経過をみるうえでとても重要になります。

前置胎盤の種類

正常な胎盤の位置 全前置胎盤 一部前置胎盤 辺緑前置胎盤
正常な胎盤の位置 全前置胎盤
(ぜんぜんちたいばん)
一部前置胎盤
(いちぶぜんちたいばん)
辺緑前置胎盤
(へんえんぜんちたいばん)

 

また、胎盤の異常については後に詳しく説明します。

胎盤は子宮に貼りついている「母体面」と、赤ちゃんと臍の緒でつながっている「胎児面」から構成されていて、赤ちゃん側の組織とお母さん側の組織両方によってつくられています。

これを聞くと、お母さんと赤ちゃんの血液がまじりあわないのか疑問に思う方もおられるかもしれません。

胎盤は無数の血管の集まりで、その先には細かな「絨毛(じゅうもう)」と呼ばれる「ひだ」のようなものが沢山あります。

そして胎盤の中では赤ちゃんの血管由来の絨毛と、母体の血管由来の絨毛が区画分けされていて、その間に広がった空間内で酸素や栄養の受け渡しをしています。

このプールのような空間のなかで絨毛を介して物質のやり取りがされているので、お母さんと赤ちゃんの血液が直接まじりあうことはありません。

胎盤はとても精巧な作りになっていることがわかります。

胎盤はいつできる?大きさは?

受精卵が着床するとhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌され、着床した部分に絨毛ができ始め、子宮の一部が厚くなり始めます。

これが胎盤のもとになっている組織です。

このように、胎盤は受精卵が着床した段階から徐々に作られていますが、実際に超音波検査(エコー)で見ることができるのは胎盤が完成する頃になります。

胎盤は妊娠15週頃に完成し、機能し始めます。

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胎盤が完成すると、俗に「安定期」と呼ばれる妊娠中期に入ります。

そしてお腹の赤ちゃんに栄養分を与えるため胎盤は徐々に成長していきます。

完成して間もない頃の胎盤はまだ100g程度ですが、赤ちゃんが生まれる頃には約500gにもなります。

そして胎盤は平べったいような印象を受けるかもしれませんが、楕円形をしていて2.5㎝ほどの厚さがあり、直径は20~30㎝もあります。

前述した通り、胎盤は赤ちゃんの成長のために必要不可欠なものなので、この時期に胎盤がしっかり成長できないと酸素や栄養補給がうまくいかず、赤ちゃんの成長に支障をきたしてしまいます。

健康な胎盤を作るためにも、無理をせずゆっくり過ごすことが大切です。

胎盤を食べる人がいるって本当?

「胎盤を食べると体にいい」などという話を聞いたことがあるかもしれませんが、実際これは「都市伝説」のようなものです。

現代では世界的に見ても先進国で胎盤を食べる国はほとんどないようで、日本産科婦人科学会でも推奨していないそうです。

アメリカの研究でも、胎盤を食べるメリットはなく、逆に感染症などのリスクの方が高いという結果が出ていると言います。

日本でも一部の芸能人が胎盤を食べたと自身のブログで発信し、話題になったこともあるようですが、胎盤は本来「医療廃棄物」として扱われるものなので、病院外に持ち出すことはできなくなっています。

また、最近はよく「プラセンタ」が美容に使われているのを目にすることも増えてきましたが、この「プラセンタ」が実は「胎盤」だったという事実を知ると驚く方もおられるかもしれません。

胎盤(プラセンタ)には若返り効果があり、美容に良いと言われているので、豚や馬の胎盤はサプリメントとして使われていることも多いです。

しかし、人の胎盤を直接食べたり皮膚に塗ったりしても、美容に良いどころか逆に感染症のリスクを高めてしまうという研究結果も出ているので、気になる方は既製品のプラセンタサプリや化粧品を購入してみる方が良いかもしれませんね。

胎盤の異常

胎盤の異常について、いくつか例をあげて説明します。

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常位胎盤早期剥離

常位胎盤早期剥離とは?

通常、胎盤は出産を終えると自然に剥がれ落ち、体外に排出されます。

しかし、出産が始まる前に胎盤が剥がれてしまうことがあり、これを「常位胎盤早期剥離」と呼びます。

常位胎盤早期剥離は胎盤が剥がれ、「血腫」という血の塊ができます。

子宮の内部で大量の出血が起こると母体の止血物質が大量に消費されてしまい、出血が止まりにくくなるため、お母さんの体が危険な状態になります。

そして前述した通り、胎盤は赤ちゃんに酸素や栄養を与える組織のため、胎盤が剥がれてしまうと赤ちゃんに酸素や栄養が行き渡らなくなり、赤ちゃんも危険な状態になります。

赤ちゃんに酸素が行き渡らないと脳や全身の臓器に障害が出たり、最悪の場合、命を落としてしまうこともあります。

常位胎盤早期剥離は全出産の0.1~1.3%程度と頻度としては多くはありませんが、母子ともに一刻を争う状態になるため、とても怖い病気です。

原因

常位胎盤早期剥離の原因は、以下の4つがあげられます。

妊娠高血圧症候群

妊娠中に高血圧を発症することを妊娠高血圧症候群と呼びます。

最近の研究では妊娠高血圧症候群の原因は胎盤の形成異常ではないかという結果が出ているようです。

胎盤に何らかの異常があると、妊娠中に胎盤が剥がれやすくなります。

絨毛膜羊膜炎

妊娠中に赤ちゃんを包んでいる膜である絨毛膜や羊膜に炎症を起こすことを、絨毛膜羊膜炎と呼びます。

前期破水を起こすと絨毛膜羊膜炎のリスクが高まると言われています。

お腹の中で炎症が起こると胎盤にも炎症が起こり、胎盤が剥がれやすくなります。

喫煙

喫煙をすると血中のニコチンが血管を収縮させるため、胎盤の血流が悪くなりやすく、結果的に胎盤が剥がれやすくなります。

腹部の外傷

交通事故や腹部への外傷などでお腹に外部からの力が加わると、その衝撃で胎盤が剥がれやすくなります。

症状

常位胎盤早期剥離の症状は、胎盤の剥離状況によってもかなり異なりますが、代表的な症状としては腹痛があげられます。

胎盤が剥がれかかっている時はお腹の一部が硬くなり、酷い腹痛を伴います。

性器からの出血がないことも多いため気付きにくいですが、お腹の中で大量の出血が起こっている状態なので、母体の貧血症状が一気に進みます。

妊娠後期になると前駆陣痛や本陣痛と区別がつきにくい場合もありますが、「周期的なお腹の張り」である陣痛とは異なり、常位胎盤早期剥離の腹痛は「連続した痛み」になります。

そして子宮全体が収縮する陣痛とは異なり、常胎盤早期剥離の痛みは一部分で、痛みの程度もかなり強いため、突然お腹が異常に張ったりしたときには常位胎盤早期剥離の可能性が高いです。

母子ともに危険な状態なのですぐに救急車を呼んで受診しましょう。

対策

常位胎盤早期剥離を予防するためには、規則正しい生活をすることが一番の近道です。

バランスの良い食事をとり、適度な運動をするように心掛けましょう。

また、喫煙も常位胎盤早期剥離のリスクを高めてしまうので、ご自身が禁煙するのはもちろん、副流煙にも注意が必要です。

また、妊娠中はお腹に衝撃を与えないように気を付ける必要があります。

上のお子さんを抱っこしたり遊んだりしている時にふとした拍子にお腹を蹴られることもあるかもしれないので、お子さんがおられる方は特に注意が必要です。

常位胎盤早期剥離は発症するとほんの数時間で一気に進んでしまうとても怖い病気なので、もし気になる症状があれば自己判断せず、念のため受診した方が良いでしょう。

胎盤癒着

癒着胎盤とは?

通常であれば産後自然に剥がれ落ちる胎盤ですが、何らかの原因で胎盤が子宮と癒着してしまうことで胎盤が剥がれないことがあります。

これを「癒着胎盤」と呼びます。

癒着胎盤は事前にリスクを予想することはできますが、確定診断は分娩の時にならないとすることができません。

帝王切開であれば胎盤を用手剥離する際に剥がれなかったり、胎盤剥離の際に大量の出血を認めると癒着胎盤と診断されます。

また、普通分娩であれば分娩後30分以内に胎盤が剥離しなければ癒着胎盤が疑われます。

症状

癒着胎盤は前述した通り分娩時に確定するため、妊娠中は特に症状を認めません。

癒着胎盤は胎盤が子宮の筋肉に入り込んでしまっているので、分娩後無理に胎盤を剥離させようとすると大量の出血が起こります。

癒着胎盤は程度によって3つに分類されています。

楔入(せつにゅう)胎盤

胎盤が子宮の筋層の表面と癒着している

嵌入(かんにゅう)胎盤

胎盤が子宮の筋層の中に侵入している

穿通(せんつう)胎盤

胎盤が子宮の筋層を貫通して奥で癒着している

楔入胎盤ではまだ癒着している部分が浅いので、慎重に用手剥離させることも可能ですが、嵌入胎盤や穿通胎盤では奥の方まで癒着が進んでいるため、用手で剥離させることはほぼ困難だと言われています。

原因

通常は妊娠すると子宮の筋層の上に「基底脱落膜(きていだつらくまく)」という部分ができて、胎盤が貼りつくためのクッションのような役割を果たしているため、胎盤が子宮の筋層に入り込むことはありません。

しかし、何らかの原因で基底脱落膜の発育が悪かったり、一部が欠損していると、胎盤が子宮の筋層に入り込み、癒着胎盤となってしまうのです。

癒着胎盤の原因は、元々基底脱落膜の発育が悪いことで起こる場合と、子宮の手術などで二次的に起こる場合に分けられます。

癒着胎盤の一番の原因としてあげられているのが、前置胎盤です。

胎盤の位置が子宮口を覆うように付着している場合、前置胎盤と言います。

元々、子宮口付近は基底脱落膜の発育が悪い部分になるため、この部分に胎盤が貼りついてしまうとどうしても胎盤が子宮の筋層の中に入り込みやすくなります。

また、帝王切開の既往があると前置胎盤のリスクが高まると言われています。

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この理由として、帝王切開では子宮の下部を切開することが多いため、その子宮下部に残った小さな傷の部分には基底脱落膜が発育しにくくなることが指摘されています。

次の妊娠でその部分にたまたま胎盤が貼りついてしまうと、癒着胎盤となるリスクが高まります。

さらに、人工妊娠中絶や子宮内膜炎などの子宮内の炎症、そして子宮内の手術の既往があると、帝王切開の際と同様に、子宮内に見えないレベルの小さな「傷」があるため、基底脱落膜の発育が悪くなり、癒着胎盤になるリスクが高くなります。

癒着胎盤の発生頻度としては全出産の0.01%程度ですが、近年は高齢出産も増えているため癒着胎盤の発生確率も上昇傾向にあるようです。

対策

癒着胎盤は分娩後に初めてわかることが多いですが、早期に診断できることもあります。

前置胎盤は癒着胎盤を合併することが多いため、妊娠後期に前置胎盤と診断がついたらエコー検査やMRIなどで胎盤が癒着していないかどうかを調べます。

癒着の程度が強い嵌入胎盤や、穿通胎盤はこれらの検査で早期発見できることが多いですが、程度の軽い楔入胎盤は検査では発見できず、結局分娩後に癒着がわかることも多いです。

早期に発見できた場合は、分娩時の大量出血に備えて自分の血液をあらかじめ貯蔵しておく「自己血貯留」が行われることが多いです。

特に帝王切開既往のある前置胎盤の方は癒着胎盤の合併を考慮に入れ、準備を進めておく必要があります。

仮に胎盤の癒着が酷く、出血が止まらない場合、子宮を全摘することもあります。

一方、出血量がそこまで多くない場合は後日改めて処置をすることもあり、病院によっても方針が異なるようです。

まとめ

妊婦 妊娠

胎盤は赤ちゃんが成長するための命綱なので、赤ちゃんのためにも健康な胎盤をつくることが大切です。

胎盤の血流を悪くするタバコやお酒は控え、栄養のバランスの取れた食事をするよう心掛けましょう。

お母さんの胎盤が元気だと赤ちゃんも元気になります。

生まれてくる赤ちゃんに思いを馳せながら、マタニティライフ楽しみましょう。

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