子供の歯並びと歯科矯正について【歯科医が解説】

歯ブラシ

子供の歯並びは、成長発育に伴って新しく歯が生えてきたり、その代わりに乳歯が抜けたりと永久歯が生え揃うまで変化を繰り返すだけでなく、歯が生えている顎の骨も成長とともに大きくなっていくのが特徴です。

常に変化しているので、子供の歯並びや噛み合わせがどのような状態になったときに、矯正歯科治療を受けることを考えればいいのか、なかなかわかりにくいと思われます。

そこで、今回、受け口や上下の前歯が当たらないなど、矯正歯科治療を受けた方がいいと思われる歯並びや噛み合わせの特徴について、わかりやすく解説します。

矯正歯科治療というと、10代後半から20歳後半くらいの年齢の人に歯の表面にブラケットという金具とワイヤーをつけているイメージが思い浮かんでくると思います。

しかし、歯並びや噛み合わせの悪さは、大人に限ったものではなく、子供にも十分起こりえます。

子供の歯並びが気になった時、いつごろから矯正歯科治療を受けるべきか、そもそも子供でも矯正歯科治療って受けられるのか、受けられるとしてどこに行けばいいのか、疑問に思ってしまいますよね。

そこで、子供の矯正歯科治療について、わかりやすく解説します。

 

子供の歯並びとは

子供の歯並びは、成長とともに変化していき、3つの段階に分類することができます。

子供の歯並びとは?

子供の歯並びは、乳歯列期、混合歯列期、永久歯列期と変化していきます。

乳歯列期

乳歯列期は、乳歯だけで構成されつ歯並びのことで、生後6か月頃から、下顎の前歯、もしくは6歳臼歯が生えてくるおおむね6歳頃までの時期になります。

この時期は、歯並びや噛み合わせの異常がわかりにくいのが特徴です。

そのため、歯並びや噛み合わせの異常を探すのではなく、歯並びや噛み合わせを悪くさせる要因、つまり指しゃぶりや爪噛み、口呼吸などの癖、鼻づまりなどがないかどうかを見るようにしてください。

混合歯列期

混合歯列期は、乳歯から永久歯に生え変わっていく時期の歯並びで、おおむね6歳頃から12歳頃までの時期です。

この時期は永久歯に生え変わっていく途中の段階なので、乳歯と永久歯が混在しているのが特徴です。

混合歯列期になると、乳歯だけだった時期にはわかりにくかった、歯並びや噛み合わせの異常が現れてきます。

もし、受け口になっている、咬み合わせた時に下の歯が隠れてしまって見えなくなる、上下の前歯があたらない、歯が内側や外側に凸凹と並んでいるような歯並びをしているときは、矯正歯科治療を受けた方がいいかもしれません。

永久歯列期

永久歯列期は、その名の通り、乳歯はもうすでになく、永久歯のみで構成される歯並びです。

この時期になりますと、歯並びや噛み合わせの異常は、はっきりと現れてきます。もう生え変わることはないので、矯正歯科治療を受けない限り、その噛み合わせが生涯続くことになります。

大人の歯並びとの違い

大人は、子供と違い成長発育が終わっています。

新しく歯が生えてくることもなければ、顎の骨も大きくなっていくことはありません。

ですので、大人の場合は、歯周病やむし歯で歯が減っていくことはあっても、子供のように歯が増えることはないという点が最も異なります。

しかしながら歯並びについては、歯が生えてきたり顎が大きくなったりしないからといって、大人の歯並びが変化しないかというとそうではありません。

子供の歯並びは新しく歯が生えてくることによって変化していきますが、大人の歯並びは、歯周病やむし歯、癖で歯が欠けたり、歯を失ったりすることで、変化していきます。

家庭でできる歯並びのチェック

ご家庭で親御さんが子供の歯並びをチェックする時は、どのようなところに注目すればいいのでしょうか。比較的見つけやすい代表的な歯並びの異常を紹介します。

反対咬合(はんたいこうごう)

いわゆる受け口です。下顎前突(かがくぜんとつ)とも言います。上下顎の前歯の重なり関係が反対になっており、下顎の方が上顎よりも前に出ている噛み合わせです。

反対咬合の原因は、遺伝的に下顎骨が上顎骨よりも大きいこと以外にも、小さい頃からの指しゃぶり、舌の先が下顎の前歯の裏側に当たっているなどの舌癖、口呼吸、頬杖をつくなどの癖によって起こることがあります。

上顎前突(じょうがくぜんとつ)

上顎の前歯が下顎の前歯よりも、大きく前方に出ている噛み合わせのことです。受け口の反対ですね。

上顎前突の原因は、遺伝的に顎の骨が大きいという場合以外に、口呼吸や爪を噛む癖などによっても起こります。

過蓋咬合(かがいこうごう)

上顎の前歯が大きく前に出て、下顎の前歯に覆い被さったような噛み合わせのことです。

上顎前突の場合は下顎の前歯が見えますが、過蓋咬合の場合は下顎の前歯が隠れて見えなくなるところに違いがあります。

開咬(かいこう)

歯を噛み合わせた時に、上下顎の前歯が垂直的に開いて、接触しない噛み合わせのことです。

開咬状態になっているとき、たいてい舌を前に出す癖、舌突出癖があります。

話をするとき、特にサ行の発音のときに、舌が前に出ていないか、チェックしてください。

叢生(そうせい)

主に前歯の生えている位置が、外側に飛び出していたり、内側に入り込んでいたりして、きれいに並んでいない歯並びのことです。

歯の大きさと、生えてくるスペースのアンバランスによって生じますが、むし歯を放置していても起こりえます。

むし歯を放置することが歯並びや噛み合わせに影響するのはこのためです。

この他にも、鋏状咬合(はさみじょうこうごう)、交叉咬合(こうさこうごう)など、いろいろな噛み合わせの異常がありますが、これらはなかなか気づくのが難しいです。

早めの矯正のメリットとは?

子供のころから矯正歯科治療を開始すると、成長に合わせながら歯を整った位置に動かして並べることが出来るというメリットがあります。

顎の骨を拡大できる

大人になってから矯正歯科治療を開始することもできますが、顎の骨の成長が止まっていますので、歯が並ぶスペースが足りないときは歯を抜かなければなりません。

しかし、子供の場合は、スペースが足りないときは顎の骨の成長方向を適した方向に誘導することで、顎の骨を拡大することが出来ます。

そうすることで、歯を抜くことなくきれいに並べることが出来るようになります。

後戻りがしにくい

大人になってから行なう矯正歯科治療では、せっかくきれいに歯を並べても後戻りを起こして、再び歯並びが悪くなることも珍しくありません。

そこで、後戻りをしないように、リテーナーとよばれる装置をつけなければなりません。

しかし、子供のときから行なう矯正歯科治療では、顎の成長発育を利用して歯の位置をきれいな位置に整えることができます。

リテーナーをつけなくても大人の矯正歯科治療と比べて、後戻りを起こす可能性が少なくなります。

虫歯予防もできる

矯正歯科治療を受けている間は、2〜3か月に一度くらいのペースで定期的に歯並びの状態をチェックします。

その時、歯磨きがきちんとできているか、虫歯が発生していないかも同時に調べます。

歯科医院は定期的に受診するのが望ましいのですが、自覚症状がなければなかなか受診することがないのが実情で、気がついた時には大きな虫歯ができていることも珍しくありません。

矯正歯科治療を受けていれば、定期的に通院しなければならないので、虫歯の予防や早期発見、早期治療も期待できるのです。

子供の矯正とは

歯ブラシ

子供の矯正とは?

子供は、成長発育の段階にあるので、背も高くなりますし、顔つきも変わってきます。顎や歯も同じで、年とともに成長していきます。

子供の矯正歯科治療は、子供の成長発育を利用して、歯を並べたり、顎の骨の成長方向をコントロールしたりするところに特徴があります。

大人と子供の矯正の違い

大人は、歯はすべて生え終わっており、顎の成長も止まっています。

そのため、矯正歯科治療において、歯の大きさと顎の骨のサイズが合わないときは、歯を抜いたり、顎の骨きりの手術をしたりしなければならないことがあります。

しかし、子供の場合は、歯は生えている途中だったり、顎の骨も成長して大きくなっていっていたりします。

これを利用すると、歯が生えてくる時に、歯に合うように顎の骨の成長をコントロールしたり、埋もれて生えてきにくそうな歯を引っぱり出して生やしたりすることが出来ます。

つまり、抜歯や手術をしないでも歯をきれいに並べることが出来る可能性が高いのが、子供の矯正歯科治療の特徴です。

歯並びがいいから大丈夫?

子供の歯並びは、乳歯だけで構成される乳歯列期、乳歯と永久歯が混在している混合歯列期、永久歯に生え変わった永久歯列期にわけられます。

乳歯列期

歯並びや噛み合わせの異常が現れてくるのが、混合歯列期以降です。

言い換えれば、乳歯列期は歯並びや噛み合わせの異常が表面化しにくく、一見すると歯並びがいいと思われてしまうことがあります。

しかし、この時期には、指しゃぶりや口呼吸、爪咬みなどの癖が隠れていることがあります。

こうした癖は、後々の歯並びに悪影響を及ぼしてくるので、歯並びが良さそうに見えても注意が必要です。

混合歯列期以降

混合歯列期以降には、歯並びや噛み合わせの異常が現れやすくなります。

ところが、前歯の歯並びの異常はわかりやすくても、奥歯の場合はそうではありません。

ですので、一見すると歯並びがいいように思えても、実は奥歯の歯並びが整っていなかったというようなことがあります。

歯並びがいいかどうかは、歯科医院で判断してもらった方がいいでしょう。

子供のうちに矯正をするメリット

大人になってからでも矯正歯科治療は受けることが出来ますが、子供の頃からの矯正歯科治療には大人になってからのそれでは得られない利点があります。

癖を治せる

指しゃぶりや口呼吸など、お口や歯に関係する癖を小さい頃から改善させることが出来ます。癖は、続ければ続けるほど治すのが難しくなります。

早い段階で癖に気がつけるので、治しやすいですし、癖に伴うお口の機能の発達障害を防ぐことが出来ます。

抜歯しないで出来る可能性

大人の矯正歯科治療では、歯の大きさと歯を並べるスペースを比べて、スペースが不足しているときは歯を抜かなければきれいに歯を並べることが出来ません。

子供の頃から矯正歯科治療を受けていると、歯の形や大きさ、生えてくる順序に合わせて、顎の成長方向を誘導すできるので、抜歯をしなくてすむ可能性があります。

手術しなくても出来る可能性

歯並びや噛み合わせの異常の原因が、顎の骨格そのものあるときは、矯正歯科治療を完了させるために顎の骨の手術をしなければならないことがあります。

しかし、子供の頃から矯正歯科治療をしていると、顎の骨の成長発育を適切にコントロールできるので、手術しなくても歯並びがきれいになる可能性が高まります。

後戻りが少ない

矯正歯科治療を終えた後、歯の並びが元に戻ってしまうことを後戻りといいます。

大人の矯正歯科治療では、後戻りを防ぐためにリテーナーという後戻り防止装置を使うのですが、それでも後戻りが生じてしまうことが多々あります。

子供の頃から矯正歯科治療をしていると、歯の位置に合うように顎の骨が成長してくれるので、後戻りが起こる可能性が低いです。

歯医者

歯医者さんの選び方

子供の歯並びを治すのは矯正歯科治療ですから、専門である矯正歯科がおすすめです。

歯科医院をみて、看板に矯正歯科を標榜している歯科医院を選ぶといいでしょう。

もちろん、子供を専門で診療している小児歯科でも、成長発育に合わせた治療を行なっているところであれば矯正歯科治療が可能なところもありますし、一般の歯科医院でも受けることが出来るときもあります。

もし、矯正してもらえるかどうかよくわからないときは、受診を希望している歯科医院に相談してみるといいでしょう。

その上で、矯正歯科治療は保険が適応されない自費診療なので高額になりがちです。そこで、以下のポイントを参考にしてください。

説明がしっかりしている

矯正歯科治療の方法だけでなく、検査をしなくてもわかる範囲で、おおまかでいいので治療期間や治療費などを説明してくれる。

検査をした後は、検査の結果資料を提示しながらていねいに説明してくれる。

こうした点をチェックしてみてください。

無理強いしない

費用が高くなったり、期間が長くなったりすると、迷ってしまうのが常です。

そんなときに、無理強いしてくる歯科医院はおすすめできませんね。

専門医

専門医でなければならないということはないのですが、専門医資格を持っている歯科医院と、そうでない歯科医院で迷っているときは、そこのところで選んでもいいでしょうね。

子供の矯正とは?

子供の矯正歯科治療では、大人ではあまり用いられない方法が使われます。具体的には、主に筋肉の力や骨の成長を利用した方法です。

機能的顎矯正装置

アクチバトールやFKOともよばれ、受け口の治療に使われる矯正装置で、上下顎一体型の人工歯がついていない入れ歯のような形状をしています。

これも筋肉の力を利用した矯正装置で、上顎の前歯を外側に、下顎の前歯を内側に移動させます。

咬合斜面版

上顎の内側につける人工歯がついていない入れ歯のような矯正装置です。

咬合斜面版は、上顎が下顎よりも前方に出過ぎているような時に用いられます。

筋肉の力を使って、下顎骨を前方へ発育させて、上顎骨と下顎骨の大きさのバランスを整えます。

リップバンパー

リップバンパーとは、唇の裏側に接触するようなU字型のワイヤーです。これを6歳臼歯につけたバンドに装着します。

リップバンパーも筋肉の力を使った矯正歯科治療法の1つです。

リップバンパーがあると、前歯に唇が当たらなくなりますので、前歯が唇によって内側へ押される力から解放されます。この働きによって前歯が自然にきれいに並ぶようになります。

拡大装置

上顎の骨の大きさを広げるために使われる矯正装置です。

上顎骨にあるY字型をした骨の縫合部を広げることで、上顎骨の成長を促します。

ですので、成長期には有効ですが、顎の骨の成長が終わりに近づいてくると効果がなくなってきます。

急速拡大装置と緩徐拡大装置とあり、症例によって使い分けます。

トゥースポジショナー

トゥースポジショナーは、本来は大人の矯正歯科治療が終わった後に使われる後戻り防止装置なのですが、中学生くらいの子供に使うと、軽い歯と歯の隙間や傾斜を治すことが出来ます。

保隙装置

保隙装置とは、乳歯が生え代わりで抜けるべき時期よりも早い段階で、むし歯や事故などによって抜けてしまった時に、本来その乳歯があったスペースがなくならないようにする矯正装置のことです。

抜けたままにしておくと、奥の乳歯が前によってくるため、抜けた所に生えてくるべき永久歯のスペースが不足してしまいます。

これを保隙装置によって防ぐことで、永久歯が生えてくるスペースを確保するのです。

まとめ

子供の歯並びは、乳歯列期、混合歯列期、永久歯列期の3段階に分けることができます。
子供の矯正歯科治療は、成長発育を利用できるという大人にはないメリットがあります。

乳歯列期には、歯並びや噛み合わせの異常を見出すことは難しいのですが、混合歯列期以降に歯並びや噛み合わせを悪くする癖を見つけることはできます。

混合歯列期以降になれば、歯並びや噛み合わせの異常がよくわかるようになります。

大きくなってから癖をなおすのは難しいので、なるべく早い時期に見つけてなおすようにしてください。

成長発育を利用出来るメリットを活かすため、子供の矯正歯科治療では大人とは違った矯正装置が使われます。

子供の頃から矯正歯科治療を受けると、大人でしばしば行なわれる矯正歯科治療のための抜歯や手術のリスクを減らし、しかも後戻りも起こしにくくすることができます。

歯並びや噛み合わせに不安なことがあるときは、一度歯科医院で相談することをおすすめします